まごころ介護のお役立ちコラム

MAGOCORO COLUMN

配偶者居住権について

居住権
2019年1月から段階的に相続法が改正されました。ご自身や親の老後に大きく影響する事柄なので、知っておくと「いざ」というときに安心です。
被相続人が亡くなった場合でも、遺された妻(夫)の住居や生活の心配を解決する方法の一つとして活用を検討したいのが、配偶者居住権です。今回は遺された配偶者の住居などを保護するために施行された「配偶者居住権」について解説してきます。

「配偶者居住権」とは

配偶者居住権は、被相続人(亡くなった方)の配偶者が、相続開始後も終身または一定期間、無償で自宅に住み続けることができる権利です。
日本の相続における配偶者の優遇を改善する目的で、2020年4月1日に施行されました。配偶者居住権は、この民法改正において新たに創設された権利です。

被相続人による遺言又は相続人による遺産分割協議等によって配偶者居住権を設定すれば、配偶者が住んでいる場所を失う心配はありません。
配偶者居住権が設定されたことで、配偶者は自宅と一定程度の生活費を確保できるようになったので、配偶者居住権は配偶者の生活を守るための重要な権利であるといえます。

事例をみていきましょう

相続人

妻、長女、長男

遺産

相続財産
自宅不動産:3,000万円
預貯金:2,000万円
遺産合計:5,000万円

相続法改正前

今回のケースの場合、
配偶者が居住建物を取得すると、他の財産を受け取れないことに...。

遺産合計5,000万円
遺言書がなく、以下の場合で分けたとすると、


自宅不動産3,000万円を相続


配偶者が自宅(3,000万円)を相続しているので
預貯金の2,000万円を長女と長男が1,000万円ずつ相続

改正前だと、妻が自宅不動産を取得すると住む場所はあるけれど、配偶者は現金がもらえず、生活費が不足する可能性がありました。
働いて収入を得ることが難しい高齢者がまとまった現金を相続できないのでは、その先の生活に対する不安は大きいでしょう。

また、長女と長男の相続分は法定相続分の1/2の2500万円(このケースの場合ひとり1250万円)に達していないため、

配偶者は不足分500万円の代償金を、子から要求される可能性もありました。

財産を所有していない場合は、これまでだと相続財産の自宅を売却すること以外での解決は困難でした。

このように、相続人の誰かが不満を持つ結果となります。
続いて、配偶者居住権を利用する場合の設例をご紹介します。

相続法改正後

配偶者居住権が設定されると、自宅の建物に関する権利が、「居住権」(住む権利)と「所有権」に分けられます。
この「居住権」のみを配偶者が取得し、「所有権」を子どもなど、ほかの相続人が相続するというのが配偶者居住権の基本的な仕組みです。
配偶者は家の所有権ではなく、居住権を取得できます。
そのため、妻は自宅での居住を継続しながら、その他の財産も取得できるようになり、生活費の心配が軽減されます。


配偶者居住権の価値= 「建物敷地の現在価値」 - 「負担付所有権の価値」

   の一例                  配偶者が生涯住み続ける
                           前提で計算

今回のケースの場合

自宅不動産2,000万円
例えばそれぞれの価値を居住権1,000万円、所有権1,000万円に分割
→自宅の建物に関する権利を居住権と所有権に分割できます。

妻 ➡ 居住権(1,000万円)
子 ➡ 所有権(1,000万円を分与)

預貯金3,000万円

妻 ➡ 1/2(1,500万円)
子 ➡ 1/2(1,500万円を分与)


配偶者居住権 1,000万円
預貯金 1,500万円
相続財産:2,500万円

配偶者はそのまま自宅に住み続けられる上に、現金1,500万円を相続できるため、生活資金の不安が大きく軽減されます。

長女
負担付き所有権 500万円
預貯金 750万円
相続財産:1,250万円

長男
負担付き所有権 500万円
預貯金 750万円
相続財産:1,250万円

配偶者居住権を設定するには

配偶者居住権の設定に登記は必要なく、未登記でも権利としては成立します。しかし、配偶者居住権が設定された場合、居住建物の所有者は配偶者に登記を備えさせる義務を負います。
また、配偶者居住権を法的に第三者に対して主張するには、法務局で登記の手続きをおこなう必要があります。

配偶者居住権のメリット

配偶者居住権は配偶者が住まいを確保するためのものですが、他にも様々なメリットがあります。

・今までの家で生活が継続できる
・生活費と自宅の両方を確保できる
・二次相続の際に相続税を軽減できる可能性がある
・代償金を支払わずに済む可能性がある

配偶者居住権のデメリット

配偶者居住権は、以下のようなデメリットや注意する点もあります。

・配偶者の存命中は第三者に譲渡・売却ができない(同様に承諾なく無断で、賃貸や増改築もできません) ※①
・法律上の配偶者のみ利用できるので、事実婚や内縁配偶者は対象外 ※②
・配偶者居住権を途中で放棄すると税金がかかる事がある
・所有者が固定資産税を負担する必要がある

※①例外として、配偶者自身が配偶者居住権を放棄した場合は権利を消滅させる事ができますが、認知症になった配偶者に居住権の放棄をさせるのは困難です。
また、配偶者居住権を設定した自宅が火災で燃えるなどして使用できなくなったときも、配偶者居住権は消滅します。

※②内縁の妻に居住権が認められたケースも存在しますが、正式に法案に盛り込まれていない以上、配偶者居住権を利用できるのは容易なことではありません。

二次相続したときの節税対策にも

配偶者居住権は建物に関する権利です。
土地には権利が適用されませんが、実際には建物が建っている土地も利用するため、土地利用権を含めて評価されて税額が決まります。

二次相続まで含めて考えたとき、配偶者居住権を利用しない場合と、利用する場合とで、相続税額も変わります。一次相続と二次相続の2回の相続を合わせた場合に、配偶者居住権を利用するケースのほうが、相続税額を低く抑えられ節税になる可能性があります。

さいごに

今回は配偶者居住権についてご紹介しました。遺された家族が安心して暮らしていくためには、相続の基礎知識を知っておくのも大切です。
そして、相続法は段階的に改正されていますので、生前の相続対策や相続税の申告などでも分からない事があれば、司法書士や税理士などの専門家に早めに相談することをオススメします。
まごころ相談窓口でも、相続やお住いのご相談を承っております。お困りの方はぜひ一度お気軽にまごころ相談員へご相談ください。

まごころ相談員へ相談する

配偶者居住権の設定が、メリットになるかデメリットになるかは個人によって異なりますので、不動産の相続問題が発生する前に内容をよく吟味し、ご家族や専門家に相談してから権利を取得するかどうか判断しましょう。

監修

川原田 慶太

代表

川原田 慶太(かわらだ けいた)

保有資格
司法書士(大阪第2382号),簡易訴訟代理等関係業務認定(第612054号),宅地建物取引士
専門分野
相続・後見業務

杠(ゆずりは)グループ (https://yuzuri-ha.or.jp/)

監修

橋本 珠美

代表取締役、シニアライフ・カウンセラー

橋本 珠美(はしもと たまみ)

保有資格
産業カウンセラー、国家資格キャリアコンサルタント
専門分野
高齢社会に生きる人々を応援する会社

株式会社ユメコム (https://www.yumecom.com)

公開日:2022年10月14日 更新日:2025年6月19日

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