まごころ介護のお役立ちコラム

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離れて暮らす親を扶養家族にする条件とは?

電話する高齢女性

配偶者や子どもなどの扶養家族がいると税金が優遇される「扶養控除」はおなじみですが、実は離れて暮らす親でも条件があえば扶養家族に入れることが出来るのをご存知でしょうか。扶養と一言でいっても「税金(所得税・住民税)の扶養」「社会保険(健康保険)の扶養」の2種類が存在しますが、今回は税金面の扶養についてご紹介します。

扶養控除はご存じですか?

扶養控除とは、納税義務のある者に所得税上の控除対象となる扶養家族がいる場合に、扶養家族の人数に応じて一定の金額の所得控除が受けられる制度のことです。
扶養控除の制度によって、納税者本人の納税負担が軽減されます。

「税金(所得税・住民税)の扶養」と「社会保険(健康保険)の扶養」とは?

「税金(所得税・住民税)の扶養」

「税金(所得税・住民税)の扶養」とは、所得税を計算する際に配偶者控除や扶養控除を受けられる条件としての扶養です。
所得税法上、家族を扶養していると認められている場合は扶養控除等の所得控除を受けることができます。
そのため、住民税が安くなり、税金面で安くなるメリットがあります。

「社会保険(健康保険)の扶養」

一方、扶養者が加入している健康保険に家族が加入できる条件としての扶養です。
健康保険では、加入者に扶養されている家族は保険料を払うことなく扶養者が加入している健康保険に加入することができ、健康保険料を払わなくてよいというメリットを受けることができます。
また、厚生年金に加入している人に扶養されている配偶者は、「被扶養配偶者」として国民年金第3号被保険者となり、保険料を支払うことなく国民年金に加入できます。

次に、別居している家族を扶養にするための条件やメリットについてご説明します。

別居している家族を扶養に入れるための条件

所得税法上の扶養控除を受ける条件

親の年間の合計所得金額

所得税の扶養控除は親の所得制限があります。

●親の年間所得合計が48万円以下であること(給与のみなら103万円以下)
※遺族年金や障害年金などは非課税ですのですので年金収入に含みません。

この制限額を超えると所得税の扶養控除は使うことができません。

生計をともにしていること

また、同居・非同居にかかわらず「生計を一にしている」ことが条件になります。

●同居せずとも常に生活費や療養費等の送金が行われている場合には生計をともにしているとされます。小遣い程度の額では同一生計ではないとみなされます。

※親が年金で十分に生活できており、仕送りを使わずに貯金していると同一生計とはみなされない場合があります。

送金の事実を証明できるように通帳のコピーや銀行の振込票、ATMの入出金伝票、現金書留の控えなどをきちんと保管しておきましょう。

扶養家族の対象

●6親等内の血族および3親等内の姻族
●自分自身の両親や配偶者の両親、そしてそれぞれの祖父母、甥、姪も対象です。

社会保険上の被扶養配偶者や被扶養者にするための条件

国民年金第3号被保険者になる条件

配偶者が国民年金第3号被保険者になるための条件は3つあります。
第3号被保険者になれば、配偶者は保険料の負担無しで国民年金に加入することができます。

・配偶者が20歳以上60歳未満であること
・第2号被保険者に扶養されていること
・配偶者の年収が130万円未満(障がい者の場合は180万円未満)であること

※「第2号被保険者に扶養されている」とは、配偶者の年収が次の条件を満たしているかどうかで判断されます。
 ▷同居の場合:収入が扶養者の収入を下回る
 ▷別居の場合:収入が扶養者からの仕送り額を下回る

また、配偶者の年収が130万円を超えると自分で社会保険に加入しなければなりません。ただし、社会保険の適用拡大によって年収130万円未満でも社会保険に加入した人は、第3号被保険者になることはできません。

健康保険の被扶養者になる条件

家族が健康保険の被扶養者になる条件は、扶養者と同居か別居で異なります。
被扶養者になることで扶養者の健康保険に保険料の負担無しで加入することができます。
●同居の場合
 ・扶養者の3親等内の親族であること
 ・扶養者に生計を維持されていること(=収入が扶養者の収入を下回ること)
 ・年収が130万円未満(障がい者の場合は180万円未満)であること

●別居の場合
 ・扶養者の配偶者や子、兄弟姉妹、父母、祖父母などであること
 ・扶養者に生計を維持されていること(=収入が扶養者からの仕送り額を下回ること)
 ・年収が130万円未満(障がい者の場合は180万円未満)であること

別居の家族については、「収入が扶養者からの仕送り額を下回る」かどうかが、扶養の有無を判断するポイントです。

親を扶養に入れるメリット

親を扶養に入れる最大のメリットは、税金が減額される扶養控除が受けられることです。
所得税と住民税を節税することができます。

●老人扶養親族(70歳以上)
 ▷同居老親等以外の者 控除額48万円
 ▷同居老親等     控除額58万円

事例で見てみましょう

Mさん:40歳 会社員 ひとり暮らし
実母 Sさん:75歳

Mさんは親のSさんとは別居していて、ひとりで暮らし、働いています。
母のSさんは、長年自営業で働いていたため、年金額は少なく、68万円しか受給していません。
生活費としては不足していて、貯金を崩して生活していますが、残りわずかとなってきました。
そこでMさんは母Sさんに仕送りをすることにしました。
Mさんの年収は、340万円です。
Mさん自身の生活費や将来のための貯蓄を考えると、多くを仕送りすることはできませんが、何とかSさんの年金額を超える、75万円を送ってあげることにしました。

◇母親を扶養することでMさんの税金は削減
老人扶養親族で同居老親等以外の者を扶養する場合、所得税の控除額は48万円となります。
このため、別居で母親を扶養するMさんの所得税(税率5%)は年2万4千円減ります。
住民税は、38万円の老人扶養控除が適用され、税率10%で、3万8千円が減ることになります。

合計で6万2千円の税金の負担が減ることになります。

親が扶養に入る3つのデメリット?

介護保険料負担が増えることがある

65歳以上の親が扶養に入ると、世帯収入によっては介護保険料が増えることがあります。
※介護保険は40歳以上と65歳以上に分けられ、65歳以上の介護保険料については世帯の収入などによって決まります。

親の支払う介護サービス利用料が増えることがある

ご家族のなかに高所得の方や住民税が課税されている方がいると、扶養に入った親が支払う介護サービスの利用料負担額が増える可能性があります。

老人ホーム等での自己負担額が増える

扶養に入ることで、介護施設に入所した時の食費や居住費の負担額が増える場合があります。

それぞれ、別居から同世帯になったり、世帯収入の変化によってはデメリットもありますのでわからないことがあれば一度、専門家にご相談してみてください。

扶養控除を受けるための手続き

給与所得者の場合は、年末調整の際に勤め先に提出する「扶養控除等申告書」の扶養親族欄に名前や住所などを記載して提出することで所得から控除したうえで税額が計算されます。
また、自営業者の場合は税務署での確定申告時に控除申請をしてください。
別居家族が生計維持要件を満たしていることを確認するため、「親族関係書類及び送金関係書類」などが必要となるため、手続き前に勤務先(年末調整)や税務署(確定申告)に確認しましょう。

さいごに

離れて暮らす親でも扶養家族にできる条件についてご紹介しました。
条件さえ満たせば、お金を節約することができるのはうれしいですよね。親に定期的に仕送りをしている方は自分が条件にあてはまっているかチェックしてみてください。
ただし、扶養家族にすることにより、税金が減額される扶養控除が受けられることはメリットですが、それぞれの家庭の事情によってはデメリットもあります。わからないことがあれば、専門家にご相談されることをオススメします。

監修

中川義敬

中川義敬

日本クレアス税理士法人 執行役員 税理士

東証一部上場企業から中小企業・個人に至るまで、税務相談、税務申告対応、組織再編コンサルティング、相続・事業承継コンサルティング、経理アウトソーシング決算早期化等、幅広い業務経験を有する。個々の状況に合わせた対応により「円滑な事業承継」、「争続にならない相続」のアドバイスをモットーとしており多くのクライアントから高い評価と信頼を得ている。

日本クレアス税理士法人(https://j-creas.com)

橋本珠美

橋本珠美

2001年4月、株式会社ユメコムを起ち上げ、介護・福祉の法人マーケットを中心に、誰もが高齢社会を安心して過ごすためのコンサルティングを始める。
また「高齢者と高齢者を抱える現役世代」のための相談窓口「シニアサポートデスク」「ワーク&ケアヘルプライン」を運営し、高齢者やそのご家族の幅広いお悩み(介護・相続・すまいなど)にお応えしている。
相談窓口の事例と自身の経験(ダブルケア)を取り入れたセミナー活動は好評を得ている。

株式会社ユメコム(https://www.yumecom.com)

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