まごころ介護のお役立ちコラム

MAGOCORO COLUMN

高齢者を詐欺から守る詐欺・防犯対策とは?


2022年総務省がまとめた人口統計によると、65歳以上の高齢者人口は、総人口の29.1%を占めます。おおよそ3人に1人は高齢者です。
そして高齢者をターゲットにした犯罪の増加が社会問題になっています。
今回は、詐欺・防犯について対策法などをお伝えします。ぜひご家族と共有してください。

特殊詐欺

特殊詐欺に対する意識

近年、高齢者を狙った特殊詐欺などの犯罪が後を絶ちません。
自宅に不審な電話がかかってきたことはありませんか?または、離れて暮らす高齢の親の電話対応に不安を感じたことはありませんか?
親族、警察官、弁護士等を装い電話をかけるなど年々、手口は巧妙になっています。
警察庁によると、2020年の特殊詐欺被害のうち高齢者(65歳以上)の被害認知件数は11,587件もあり、法人被害を除いた総認知件数に占める割合は85.5%となっています。
しかし、自分は詐欺被害に遭わないと思っている方が80.7%という結果も出ています。
「私は大丈夫」「私はこんな詐欺に引っかからない」と他人事だとは思わずに、普段から十分注意する必要があります。

参考:令和2年における特殊詐欺の認知・検挙状況等について(確定値版)

参考:内閣府 平成28 年度 特殊詐欺に関する世論調査結果より

特殊詐欺の種類

特殊詐欺の手口にはさまざまあり、2020年1月から、警視庁では特殊詐欺の手口を10種類に分類しています。

・オレオレ詐欺
・預貯金詐欺
・架空料金請求詐欺
・還付金詐欺
・融資保証金詐欺
・金融商品詐欺
・ギャンブル詐欺
・交際あっせん詐欺
・その他の特殊詐欺
・キャッシュカード詐欺盗(窃盗)

①オレオレ詐欺(振り込め詐欺)

家族や警察などになりすまし、お金を振り込ませる詐欺です。
電話に出てみると「母さん、オレオレ」という声がして、てっきり息子だと思い込んでしまうことから「オレオレ詐欺」と呼ばれています。
電話口だと声が良く聞き取れないため、より一層慎重に対応する必要があるでしょう。
犯人が家に直接現金を受け取りに来るケース、ATMからお金を振り込ませるケース、キャッシュカードを受け取り口座からお金を引き落とすケースなどやり口はさまざま。最近では警察や会社の上司を語る偽物の第三者が出てくる「劇場型」も増えています。70歳以上の高齢女性に被害が多く、家族の見守りや詐欺防止の対策が大切です。

騙されないための対策

  • 【録音機能付き電話】
    録音機能がついた振り込め詐欺防止用の固定電話に変更しましょう。また、在宅時でも留守番電話にすることも有効です。犯人は自分の声を証拠として残されることを嫌がります。
    知らない番号には出なくていいようにナンバーディスプレイされる固定電話だとより安心できるでしょう。今使っている電話機に後付けできる詐欺防止の対策機器もありますので検討してみましょう。

  • 【合言葉】
    合言葉などルールを決めましょう。自分や自分の家族は大丈夫だという思い込みは危険です。高齢になれば判断力は鈍りやすくなります。「自分も騙されるかもしれない」という気持ちは常に持っておきましょう。
    なりすまし詐欺の場合は、同窓会名簿などを購入して電話をかけてきます。そのため、住所や家族構成、家族や同級生の名前は知られている恐れがあります。
    合言葉にする言葉は、好きな食べ物や昔飼っていたペットの名前、旅行での思い出などパーソナルな内容を選ぶようにしましょう。

  • 【詐欺の常套句を貼っておく】
    電話を受け取った際に、振り込め詐欺の常套句を目にすることで、怪しい電話かどうか判断しやすくなるでしょう。紙に大きく書いて電話の横に貼っておき、目につくようにしておきましょう。
    ・携帯電話を落として電話番号が変わった
    ・会社の電話でかけているからこの電話番号をメモして
    ・会社のお金を横領した
    ・誰にも言わないでほしい
    ・今すぐお金が必要
    ・年金や医療費などの還付金がある
    ・キャッシュカードを預かる
    ・暗証番号を教えてほしい

    「電話番号を変えた」という内容の電話には、一度切って必ず元の番号に電話して確認してみましょう。警察や市役所などの職員を名乗る場合も、かかってきた番号を信じずに、一度電話を切って調べることによって被害を減らすことができるでしょう。

  • 【家族の声かけ】
    「最近元気がない」「お金に困っている様子だ」など、普段とは異なる様子が見られたら何かトラブルに巻き込まれている可能性があります。家族やケアマネジャー、ヘルパーなど日ごろから家に出入りする人がこまめに様子を確認して、何か不審な点を見つけたら、本人に詳しく話を聞くか消費生活センターへ連絡して早めの対策を取りましょう。特に離れて暮らしている高齢の家族には気を配り、異変がないかこまめに連絡をしましょう。周囲の人と連絡を取り合うのもよいでしょう。

  • 【相談できる体制】
    被害に遭う要因として、高齢者に「相談できる相手がいなかった」というケースがあります。「お金」に関する話は必ず誰かに相談する、振り込み依頼は必ず本人に再度電話するなどの決まりを作りましょう。

②還付金詐欺

突然、市役所の職員などを装い電話をかけてきて、「医療費の過払い金を振り込んだので確認してほしい」などと、被害者をATMに向かわせ、携帯電話で話しながら引き出しでなく振り込みの操作をさせる詐欺です。
市役所や年金事務所などの名称で電話をしてくることもあるため、うっかり信じてしまいそうになりますが払戻金や還付金の受け取りをATMで操作することはありませんので、このような電話がかかってきたら、いったん冷静になり電話を切りましょう。

③融資保証金詐欺

お金を貸すと見せかけて保証金などの名目でお金を振り込ませ、融資はせずにお金だけを騙し取る詐欺です。

④架空請求詐欺

身に覚えがありそうだけど、実際には契約していない架空のサービスや商品料金をメールやはがきなどで請求して金銭を騙し取る詐欺です。記載されている連絡先へ電話をすると、プリペイドカード払いやコンビニ払いなど、支払い方法を指示してお金を請求してきます。架空請求のメールやはがきが届いた場合は、対応しないことが一番良いでしょう。しかし、差出人が公的機関を連想させる名称であったり、「訴訟」や「差し押さえ」といった不安をあおる言葉が記載されているため、怖くなり電話をしてしまう人が多い詐欺です。

また、インターネットを見ている最中に、いきなり料金の請求画面が表示される「ワンクリック詐欺」も、こちらから行動を起こさない限りは個人情報がもれる心配はありません。メールやはがきと同じように無視しましょう。

その他の詐欺

●預貯金詐欺
警察官や銀行協会職員を名乗り、「あなたの口座が犯罪に利用されています。キャッシュカードの交換手続きが必要です」と言ったり、役所の職員を名乗り、「医療費などの過払い金があります。こちらで手続きをするのでカードを取りに行きます」などと言って、暗証番号を聞き出しキャッシュカード等をだまし取る手口です。

●金融商品詐欺
価値が全くない未公開株や高価な物品等について嘘の情報を教えて、購入すれば儲かると信じ込ませ、その購入代金として金銭等を騙し取る手口です。

●ギャンブル詐欺
「パチンコ打ち子募集」等と雑誌に掲載したり、メールを送りつけ、会員登録等を申し込んできた人に、登録料や情報料として支払わせて金銭等を騙し取る手口です。

●交際あっせん詐欺
「女性紹介」等と雑誌に掲載したり、メールを送りつけて女性の紹介を申し込んできた人に、会員登録料金や保証金として金銭等を騙し取る手口です。

●キャッシュカード詐欺盗(窃盗)
警察官や銀行協会の職員を名乗り、「キャッシュカードが不正に利用されているので使えないようにする」などと言って、隙を見てキャッシュカードをすり替えて盗み取る手口です。

万一振り込んでしまったときは...

【相談先】
■国民生活センター 消費者ホットライン
電話番号:局番なし188(いやや) 受付時間:平日9 時~17 時 土日祝10 時~16 時(窓口により異なる)
■金融機関
早急に金融機関に連絡をしましょう。必ず振り込んだ相手先の金融機関に連絡し、相手の口座を凍結してもらいましょう。
あわせて警察への通報もしなければなりません。
■警察
#9110 詐欺なのかどうか分からない、不安という場合は、迷わず電話しましょう。
被害届を提出して、捜査をお願いしましょう。

振り込め詐欺救済法が適用されるか確認しましょう

振り込め詐欺救済法は、預金口座等への振込みを利用して行われた詐欺等の犯罪行為により被害を受けた方の財産的被害の迅速な回復等に資することを目的としています。

被害総額や口座残高によっては被害額の一部、または全額が返ってくる可能性がありますので、焦らずに落ち着いて行動しましょう。
もし、振り込みをしてしまった場合は、警察や振込先の金融機関に早急に連絡をしましょう。

高齢者はなぜ詐欺にあいやすいの?

高齢者が詐欺に騙されてしまうのは主に、以下の理由があげられます。

昼間にひとりでいることが多い

家でひとりで過ごす人は、それだけ詐欺グループや悪徳業者と接触するリスクが高まります。
相談できる相手や忠告してくれる人がおらず、自分の判断だけで行動した結果、より大きな被害につながる危険があります。

孤独感から親切に接してくれる人を信用しやすい

高齢者の中には、家族と疎遠だったり気軽に話せる仲間や友人がおらず、孤独を感じながら生活をしている人も少なくありません。そんな方にとっては、自分のことを心配したり話をじっくり聞いてくれる相手に好感を抱き信用してしまうものです。犯人はそういった高齢者の心のすきまに付け込んできます。

詐欺の手口が巧妙になっている

「劇場型詐欺」のようにチームを組んだ詐欺が横行しています。詐欺の手口はテレビや新聞でよく知っていると思っていても、実際に詐欺に直面するとすっかり信じてしまったという人も少なくありません。詐欺についての知識はあっても、犯人たちのほうが一枚も二枚も上手で詐欺を見破るのは簡単ではないのです。

認知機能の低下

認知症の人は、判断力や理解力といった認知機能が低下しているため、悪質な勧誘などに直面してもそれが詐欺だとは気づけないのです。また、認知症を発症していない人でも、加齢とともに認知機能は低下するのでリスクが高まります。

振り込め詐欺などがニュースになると、「なぜあんなに簡単に信じてしまうのか」と不思議に思うかもしれませんが、詐欺の手口が巧妙になっていることに加えて、このような判断能力の衰えによって詐欺被害は深刻になっているといえます。

周りの人が気づくためのポイント

高齢者の詐欺被害に周囲の人が気づくポイントをいくつかご紹介します。
項目をチェックして、被害にあっている可能性がある場合は早めに専門窓口に相談しましょう。

■親の様子について
・定期的にお金を引き出したり、支払っていないか
・生活費が不足したり、お金に困っていないか
・買った覚えがないなど、判断能力に不安はないか

■家の様子について
・家に見慣れない人が出入りしていないか
・不審な電話のやり取りがないか
・家に見慣れないものが増えていないか
・見積書、契約書などの不審な書類や名刺がないか
・家の屋根や外壁、電話機周辺などに不審な工事の形跡はないか
・カレンダーに見慣れない事業所名などの書き込みがないか

特に注意したいのが認知症の疑いがある場合です。認知機能が低下すると、物忘れや相手の話を理解しにくくなるなどの症状が現れ、特殊詐欺などのトラブルに巻き込まれる可能性が高くなります。また、家族が気づかない間に被害が大きくなることも考えられます。

金銭管理の対策については、家族で話し合っておくとよいでしょう。

認知症の方に家族ができる対策

■ATMの利用限度額を下げておく
最近の金融機関はATMを利用して1日に振り込める金額に上限を設けています。
そのため、もし被害にあった場合でも被害を最小限にするために、利用できる金額を必要最低限にしておくことも一つの手段です。
詐欺グループが誘導して利用限度額を引き上げようとしている場合、不審に思った金融機関が異変に気付いて連絡してくれる可能性もあります。

利用をお考えの場合は、現在、利用している金融機関に問い合わせてみましょう。

防犯対策

「泥棒」と聞くと留守中に侵入する「空き巣」をイメージしますが、実際は住人が在宅中に侵入する手口も増加しています。出かけるときはもちろんのこと、在宅時にもしっかり防犯対策をすることが大切です。

住宅侵入窃盗の手口とは

住民が在宅中に侵入する「居空き」と「忍込み」は全体の約4割。
体力的に弱い立場にある高齢者は特に対策をしておくことが重要です。

参考:警視庁 令和3年 刑法犯に関する統計資料

泥棒が嫌がる部屋・環境づくり

  • 在宅時でも施錠する
    玄関はもちろん、不在になる部屋や目の行き届かない部屋は必ず鍵をかけるようにしましょう。換気のために開けることも多いお風呂場やトイレは小窓だからと開けっ放しにならないよう気をつけましょう。

  • 窓ガラスの防犯対策を強化
    泥棒の侵入経路で、毎年上位の「ガラス破り」。ガラス窓は全体を割らなくともクレセント錠の周辺を小さく割るだけでも簡単に侵入できます。そのため、気が付かない場合もあるので、防犯ガラスや防犯フィルムを一面に貼ることも効果的です。

  • 防犯グッズを有効活用
    高齢者や女性でも手軽に設定できる防犯グッズが市販されています。おすすめは窓の上部に補助錠を設置することです。補助錠を開錠するために立ち上がる必要があるため、周囲の目が気になり不都合だからです。また、窓ガラスの振動や開閉を検知すると警報音が鳴る防犯グッズの設置も有効です。

  • 足場を作らない
    泥棒は2階以上の部屋にも侵入します。侵入されないためには、家の周囲に足場を作らないことが鉄則です。集合住宅の場合は、敷地内にある自転車置き場の屋根や、自転車などが足場にされるケースもあるので注意しましょう。

  • ホームセキュリティを導入
    不正に窓を開けられた際に、警報音と同時にセキュリティ会社に自動通報したり、在宅時に「怖い!」と思ったときに非常ボタンを押すと、安全のプロが駆けつけてくれる「ホームセキュリティ」を導入することも有効です。最近では賃貸住宅にも「ホームセキュリティ」が標準で導入されている場合もあります。

さいごに

今回は高齢者の特殊詐欺や防犯に関する対策についてご紹介しました。
近年では新型コロナウイルス関連の給付金を騙し取るなど、新しい手法の詐欺がどんどん出てきているようです。自分は大丈夫だという油断は禁物です。ご家族からの声かけや合言葉などのルールで被害を防げることもありますのでよく話し合って相談しておきましょう。
また、録音機能付きの電話や防犯グッズの購入などもよい対策方法となるでしょう。それぞれのご家庭に合った対策を選んでください。

監修

橋本珠美

橋本珠美

2001年4月、株式会社ユメコムを起ち上げ、介護・福祉の法人マーケットを中心に、誰もが高齢社会を安心して過ごすためのコンサルティングを始める。
また「高齢者と高齢者を抱える現役世代」のための相談窓口「シニアサポートデスク」「ワーク&ケアヘルプライン」を運営し、高齢者やそのご家族の幅広いお悩み(介護・相続・すまいなど)にお応えしている。
相談窓口の事例と自身の経験(ダブルケア)を取り入れたセミナー活動は好評を得ている。

株式会社ユメコム(https://www.yumecom.com)

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