まごころ介護のお役立ちコラム

MAGOCORO COLUMN

「認知症」日常生活自立度を
判定する基準値とは

会話をする高齢者

認知症の症状のような行動や発言が気になるなど、親のことが心配になったら、「認知症の程度」を確認してみましょう。
認知症を患っていたとしても、現状を維持することができれば、十分な「認知症予防」であるといえます。症状が軽い段階のうちに認知症であることに気づき、適切な治療を受けることができれば、薬で進行を遅らせたり、場合によっては症状が改善することもあります。
そもそも認知症の程度なんてどうやって判断するの?という方も大丈夫です。
今回のコラムでは今の状態=「認知症の程度」を判定するための基準をご紹介します。

認知症の程度を確認してみましょう

日常生活自立度の判断基準一覧

認知症高齢者の日常生活自立度とは、認知症のある高齢者が、どれだけ自身で日々の生活を送ることができるのか、その程度をランク分けした基準値です。7段階に分類されています。介護保険制度の要介護認定調査や、主治医意見書でこの指標が用いられています。

ランク 判断基準 症状・行動例
ランク Ⅰ 何らかの認知症を有するが、日常生活は家庭内および社会的にほぼ自立している状態
基本的には在宅で自立した生活が可能なレベル
ランク Ⅱa 日常生活に支障をきたすような症状・行動や意思疎通の困難さが家庭外で多少みられても、誰かが注意していれば自立できる状態 たびたび道に迷う、買物や事務・金銭管理などそれまでできたことにミスが目立つ等
ランク Ⅱb 家庭内でも上記Ⅱaの状態が見られる 服薬管理ができない、電話の応対や訪問者との対応などひとりで留守番ができない等
ランク Ⅲa 日常生活に支障をきたすような症状・行動や意思疎通の困難さが主に日中を中心にみられ、介護を必要とする状態 着替え、食事、排便、排尿が上手にできない、時間がかかる。やたらに物を口に入れる、物を拾い集める、徘徊、失禁、大声、奇声をあげる、火の不始末、不潔行為、性的異常行為等
ランク Ⅲb 夜間を中心として上記Ⅲa の状態が見られる ランクⅢa に同じ
ランク Ⅳ 日常生活に支障をきたすような症状・行動や意思疎通の困難さが頻繁にみられ、常に介護を必要とする状態 ランクⅢa に同じ
ランク M 著しい精神症状や周辺症状あるいは重篤な身体疾患がみられ、専門医療を必要とする状態 せん妄、妄想、興奮、自傷・他害等の精神症状や精神症状に起因する問題行動が継続する状態等

※日常生活自立度の判定において、障害高齢者と認知症高齢者の2種類があります。
 障害高齢者に該当する方は判定の基準が異なりますのでご注意ください。

日常生活自立度のランクについて詳しくみていきましょう

ランクⅠ 何らかの認知症があるが、日常生活は家庭内・社会的にほぼ自立

・軽度の物忘れがあるが、火の不始末や薬の飲み忘れはみられない
・家族や支援をする人がいれば日常で困る事はほとんど無い状態
・認知症ではなく、年齢相応の物忘れの人もこのレベルで判定されることが多い

※軽度認知障害(MCI) の場合もあり、一度専門医を受診される事をお勧めします。

ランクⅡa、b 家庭内外で日常生活において困難さが多少みられるが、 誰かが注意していれば自立できる状態

・自宅外での行動が困難になる(Ⅱa)
・自宅外に加え、自宅内の行動が困難になる(Ⅱb)

認知症の進行度合いを観察する上で、認知症の人にとって自宅外は活動しにくい場所となります。自宅外では環境が常に変動し、新しい事の記憶や適応能力が低下した認知症の人にとって、外に出る事が毎回「未開の地での冒険」のようになってしまいます。反対に、住み慣れた自宅の中ではある程度生活習慣に根付いた行動ができるため、自宅外と比較すると活動しやすいと思われます。従って、自宅内での活動にも支障がみられるようになるということは、それだけ認知機能が低下したと判断できます。また、医師が要介護認定に必要な主治医意見書を書く際に「内服管理が自分でできるかできないか」で「ランクⅡb の分岐点」とする基準となるようです。内服管理ができるならⅡb より良い状態、できないならⅡb 以下という具合です。

ランクⅢa 日常生活において困難さが主に日中を中心に見られ、介護を必要とする状態

・認知症の中核症状・周辺症状(※1)が共にランクⅡより悪化
・支援を受けていても在宅生活が困難となった状態

食事や排せつといった日常生活において重要な行動が自力ではできず、周辺症状により介護者へ重い負担がかかるようになります。このような症状が日中を中心に発生しているレベルです。

【中核症状・周辺症状(※1)】

中核症状
●記憶障害‥‥‥‥‥‥新しい体験の記憶や、知っているはずの記憶の呼び覚ましが困難になる。  
●見当識障害‥‥‥‥‥時間、日付、季節感、場所、人間関係などの把握が困難になる。 
●実行機能障害‥‥‥‥旅行や料理など計画や手順を考え、それにそって実行することが困難になる。
●理解・判断力の障害‥2つ以上のことの同時処理や、いつもと違う繊細な変化への対応が困難になる。

周辺症状
●徘徊  ●不潔行為  ●拒否  ●暴言・暴力  ●活動量の低下
●抑うつ ●焦燥感   ●不安  ●睡眠障害   ●妄想 など 

ランクⅢb日常生活において困難さが主に夜間を中心に見られ、介護を必要とする状態

・Ⅲa の状態が夜間にみられるようになるとランクⅢb

夜間の介護負担増大は介護者にとって甚大な負担となり、介護者自身の体調も悪化させてしまいます。また、日中は傾眠、夜間に認知症状が出て覚醒するという昼夜逆転の状態となり、更にADL(日常生活動作)面の低下を招いてしまう。悪循環が懸念されます。

ランクⅣ 日常生活において困難さが終日続き、常に介護を必要とする状態

・Ⅲの状態が終日続き、目が離せない状態
・在宅生活は非常に困難

介護者は休まる暇もなく介護に当たらなければならなくなります。適切に介護サービス等を利用し、ご本人と介護者ができるだけ穏やかに暮らしていけるようにしましょう。

ランクM 著しく精神症状や周辺症状、重篤な身体疾患が見られ、専門医療を必要とする状態

・せん妄等の一時的な精神状態の悪化で、専門医を受診する必要がある状態

どのランクからもランクMになる可能性があり、ランクMとなった原因が治癒したら元のランクに戻る可能性が高い状態でもあります。

自立度早見表

いつ?どこで?起っているかが分かれ道

各ランクの基準は、認知症の問題行動が、いつ?どこで?起っているのかでわかれてきます。
そして、見守り>声かけ>時々介護>常時介護と必要な援助の具合により、ランクの判定も変動します。

例1

<Aさん>
日中に常時介護が必要だが夜間は良眠している ➡ ランクⅢb
<Bさん>
日中は簡単な見守り程度で良いが夜間は不穏状態となり常時介護を要する ➡ ランクⅢa
※こちらの例の場合、Aさんの方がランクが重くなります。

例2

<Cさん>
他者に対してのコミュニケーション能力が高く、外出先での行動は、ほぼ自立している。家庭内においては日常生活全般において促しや声かけなどの介護を要する ➡ ランクⅡb
<Dさん>
家庭内では日常生活全般において見守り程度の援助で自立が可能。外出先ではいつも混乱し、行動一つひとつに対して促しや誘導が必要 ➡ ランクⅡa
※こちらの例の場合、Cさんの方がランクが重くなります。

介護が必要な時間帯は日中が中心か夜間が中心か、主に介護が必要なのは家庭内なのか外出先なのか、を判断します。
その次に認知症の問題行動の内容を細かく検証していきます。
今までの暮らしの中で身近に行っていた行動に対してミスが目立ち出すことを重く判定します。外出先で度々道に迷う、お店で買い物の計算が上手にできなくなる、ということより、服薬管理が上手にできない、留守番ができなくなる、ということの方が重い判定となります。そして、排せつ、食事、着替えなどにミスや問題行動が起こることで、より重いランクへの検討を重ねていきます。

※認知症高齢者に見られる症状や行動は個人差が大きく、人によって異なります。すべての症状が当てはまるわけではなく、その日によって症状の程度も異なります。
 要介護認定を受ける際には、ご家族がご本人様の症状を説明することが大切になります。

さいごに

今回のコラムでは、認知症の程度を判断する方法として日常生活自立度の判断基準をご紹介いたしました。
日本の高齢化率は2025年に向かって上昇し、それに伴い認知症の数もどんどん増加します。そのため、認知症の早期診断・早期対応はとても重要となります。ご家族で判定基準を理解し日々のサポートの参考にしてください。

監修

橋本珠美

橋本珠美

2001年4月、株式会社ユメコムを起ち上げ、介護・福祉の法人マーケットを中心に、誰もが高齢社会を安心して過ごすためのコンサルティングを始める。
また「高齢者と高齢者を抱える現役世代」のための相談窓口「シニアサポートデスク」「ワーク&ケアヘルプライン」を運営し、高齢者やそのご家族の幅広いお悩み(介護・相続・すまいなど)にお応えしている。
相談窓口の事例と自身の経験(ダブルケア)を取り入れたセミナー活動は好評を得ている。

株式会社ユメコム(https://www.yumecom.com)

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