まごころ介護のお役立ちコラム
MAGOCORO COLUMN
居宅介護・訪問介護の現場が抱える問題~緊急現場アンケート結果報告~
厚生労働省は介護報酬改定後、訪問介護事業所の約6割が2024年8月の前年同月比で減収したと発表しました。
この要因を「訪問回数の減少」としたことに対して、UAゼンセン日本介護クラフトユニオン(以下、NCCU)は「実態と異なるのでは」との見解を示し、ケアマネジャーや訪問介護の管理者を対象に緊急アンケートを実施。現場の声を探りました。
今回はその内容についてご紹介します。
目次
厚生労働省は2025年3月31日に行った介護報酬改訂検証・研究委員会において、訪問介護事業所の介護報酬は、「すべての地域で、対前年度比5%以上減少している割合が最も高かった」と公表しました。
減収の要因は訪問回数の減少とし、下記を表明しています。
訪問介護事業所が減収となった要因
●地方では高齢者人口が減少したため
●都市部では利用者の増加により事業所間の競争の影響で利用者が分散したため
しかし、NCCUには、以前より組合員から「ヘルパーの人手不足によりサービス提供を断るしかない」などの意見が寄せられていました。このように、厚生労働省の発表と現場との声に相違があることから「訪問介護6割減収に関する緊急現場アンケート」を実施しました。
実施期間 |
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調査対象 |
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回答数 |
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調査方法 |
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では、回答結果について詳しく見ていきましょう。
「ケアプランを組めないことがある」と回答したケアマネジャーは約7割となり、現場では人手不足が深刻な問題になっていることが分かります。
先ほどの質問で「ケアプランを組めないことがある」と回答した人への質問です。時間や曜日を変更してもらうことでサービスを提供可能にしている一方で、回数を減らしたり、家族に介護をしてもらうなど、希望通りのサービス提供が難しい状況となっていることも分かりました。
「人手不足によりサービス提供を断ったことがある」と回答した訪問介護事業所は約9割に達しました。先ほどの質問と同じく、ケアマネジャー・管理者どちらも「人手不足」を感じていることがわかります。
「事業所の収入が減収した」と回答した訪問介護事業所が5割に達しており、減収理由について7割が「人手不足により受けることができなかった」と答えました
今回のアンケートについて、詳しい回答結果はコチラをご確認ください。
今回の報酬引き下げによって、人手不足がさらに深刻化し、必要なサービスを届けられず提供できない現状が浮き彫りになりました。
NCCUは、報酬の見直しを含めた再改定の必要性を訴えるとともに、減収によって経営が立ちゆかなくなっている訪問介護事業所に対し、補助金などの支援を行うべきだとしています。介護職員の処遇改善もあわせて、早急な対策が求められています。
―引用元・参照WEBサイト
UAゼンセン日本介護クラフトユニオン(NCCU)|「訪問介護6割減収に関する緊急現場アンケート」集計結果
厚生労働省|第30回社会保障審議会介護給付費分科会介護報酬改定検証・研究委員会 資料
人手不足によってケアプランが組めず、家族に介護を担ってもらったり、利用回数を減らしたりしているケースがすでに多く発生していることが明らかになりました。
「サービスを使いたくても使えない」。この現実を、我々は深刻に受け止めるべきではないでしょうか。基本報酬の見直しや処遇改善はもちろんのこと、介護人材の確保・育成、そして真の意味での体制の改革が求められています。
監修
公開日:2025年6月2日
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