まごころ介護のお役立ちコラム

MAGOCORO COLUMN

相続対策
~争いなく財産を引き継ぐために~

相続
相続は「争族」と言われることがあるほど、トラブルがよく起きます。「兄弟(姉妹)の仲がいいからトラブルなんて起こらない」「子どもたちはきっと譲り合うと思う」そんな風に考えていませんか?相続トラブルが実際に起きると骨肉の争いになり、相続手続きが泥沼化してどうにもならなくなり、家族が離れ離れになってしまうこともあります。こういった相続トラブルは、事前に知っておけば防げるものも多くあるため事前の準備が重要です。
今回は相続トラブルにしないための相続対策についてお伝えします。

相続トラブルにならない3 つのポイント

1)誰に(相続人・相続分)、2)何を(相続財産)、3)どう分けるか(遺産分割の方法)故人の遺産をどのように受け継ぐか。それは遺言があれば遺言の内容が優先となります。(※1)

遺言がなければ相続人全員の話し合いで決められます。話し合いがまとまらない時のために、法律では各相続人が「相続できる割合(相続分)」を決めています。遺産相続をスムーズに進めるためにはまず、「誰が相続人か」「それぞれどれだけの相続分があるか」を押さえておくことが肝心です。

1遺言があると、本来の法定相続人であっても遺産相続ができなくなることがあります。そのような時に遺留分侵害額請求権を行使することによって最低限の遺産をもらうことができます。

誰に(相続人・相続分)

法定相続人になれるのは“配偶者相続人”と“血族相続人”

財産を遺して亡くなった故人のことを「被相続人」、その財産を受け取る立場にある人たちを「相続人」といいます。「相続人」となるのは、故人の配偶者や子や孫などの直系卑属、親や祖父母などの直系尊属、兄弟・姉妹などが含まれます。どの相続人が、どれぐらいの割合で財産を相続できるかは、民法で定められています。法律によって定められた相続人のことを「法定相続人」といいます。法定相続人には順位があり、原則として順位の高い人から相続人になることが決まっています。

法定相続人の範囲と順位

故人の配偶者
常に相続人になります。

第1順位(直系卑属)
子ども・孫
※孫は子どもがすでに他界している場合に第1順位となります。

第2順位(直系尊属)
父・母・祖父・祖母
※祖父・祖母は父・母が先に他界している場合に第2順位となります。

第3順位
兄弟・姉妹・甥・姪
※甥・姪は兄弟・姉妹がすでに他界している場合に第3順位となります。

相続人の人数によって法定相続の割合と金額は違ってきます。相続トラブルを避けるためにも、早めに専門家に相談しながら準備していきましょう。

【相続人・相続分のチェックポイント】
事前に相続人や相続分の準備が必要??
ひとつでも当てはまる場合は、早めの準備が必要です。

  • 相続人が誰か分からない

  • 相続人がいない(※1)

  • 子どもがいない

  • 前妻との間に子どもがいる

  • 隠し子がいる(※2)

  • 子どもに優劣をつけたい(※3)

  • 相続人の数が多い

  • 相続人が高齢

  • 行方不明の相続人がいる(※4)

  • 相続人に認知症の人がいる(※4)

  • ずっと面倒を見てくれた人がいる

※1 相続人がいない場合、すべて国庫に帰属することになります。事前に渡したい人がいるなどあれば、遺言書の作成など検討が必要です。

※2 被相続人が「話し合いはついている」「生前に財産を渡してあるから大丈夫」と思っていても意味はありません。

※3 実子と養子、本妻の子と内縁の子、前妻の子と嫁に行った娘、家を継いでいる長男、健康な子と体の弱い子、相続分はすべて同じ割合です。子どもに優劣をつけて遺産を引き継いでもらいたい場合は遺言書が必要です。

※4 家族が代わりに話し合いに参加することは許されません。不在者財産管理人や成年後見人を選任する必要があり、費用と時間がかかります

何を(相続財産)

財産は「財産目録」にまとめておくことをお勧めします。財産目録の作成は、円満・円滑な相続手続きを実現するために必要不可欠です。

【必要な理由】

①相続税の申告の要否、納付額を明らかにできる
②円満な遺産分割を実現するために必要不可欠

相続財産にはプラスの財産だけでなく、マイナスの財産もあります。どこにどのような財産がどれだけあるのか?意外と自身でも把握していない方が多いのではないでしょうか。もしも、万が一のことがあった場合、その時残された家族が果たしてスムーズに遺産を引き継ぐことができるでしょうか。
さらに、家族がプラスの財産よりマイナスの財産が多いことを知らずに相続してしまうと、借金を支払う義務を引き継ぐことになってしまいます。まずは、自身でどこにどのような財産がどれだけあるのか、一覧表にされることが大切です。

遺産(相続財産)一覧表の例

不動産※権利証、固定資産税の納税通知書を見てください。
①種類
②所在地
③金額

動産・金融資産 ※証券、預金通帳を見てください。
①品目(預金・貯金/株式/保険/貸付金/)
②取扱店
③口座・証券番号
④金額(評価額)

債務
①品目(税金/住宅ローン/キャッシング/個人からの借入/保証人)
②取扱店
③金額

相続でいちばん困る「遺産は自宅不動産だけ」

財産目録をまとめた際、「自宅はあるけど、お金がない」という問題を抱える人は少なくありません。現実問題として、遺産の分け方で問題が生じやすいのは、単に分割できない財産です。その「代表選手」が土地・建物などの不動産です。
「自宅はあるけどお金はない」という場合、現実の問題として自宅はどう処分さるのでしょうか。遺言書がない場合、次の3つの方法が考えられます。

① 建物を壊して更地にして、土地だけを等しい価値になるように分筆、きょうだいがそれぞれで引き継ぐ。

② きょうだいで不動産を共有して相続し、売却してそのお金を分ける。または、そのまま不動産を貸して、家賃を分ける。

③ 兄(または姉)か弟(または妹)が単独で不動産を取得し、その代わりに対価として現金をもう一方に支払う。

きょうだいが親と離れ、それぞれ自宅を持っている場合は比較的スムーズにまとまるでしょうが、きょうだいの誰かが親と同居していた場合は簡単にはいきません。 「住み慣れた我が家」という思い入れがあるでしょうし、 生前から親の家計と同居人の家計がきちんと分けられていないケースも少なくありません。こうした場合にトラブルを回避する方法として、

●普段から親の家計と同居の子の家族の家計を、きちんと分けて管理することです。
親が自由にお金を使える状態を作っておき、きちんとした使途の明細記録は付けておきましょう。

●親が元気なうちに、遺言書を書いてもらうことです。

 不動産をいったんきょうだいで平等に相続してしまうと、売却するにも、他人に貸すにも、自分ひとりだけでは決められず、共有者の協力が必要になります。親が同居の子に家を相続させたいなら、遺言書を作成し、もう一方の子には別の配慮をしておくのがよいでしょう。遺産は自宅だけであっても、事前にちゃんと考えて備えておくことが必要なのです。

どう分けるか(遺産分割の方法)

民法では法定相続人に対して「法定相続分」が定められています。しかし、必ずしも法定相続分で財産が相続されるのではありません。遺言書があればまずそれが優先され、なければ法定相続人が話し合って配分を決めます。その時の配分の目安として法定相続分が決められています。

遺言による相続
亡くなった人が遺言書により相続の内容を決めます。

遺産分割協議による相続
相続人全員で話し合って、遺産の分配方法を決めます。

法定相続分
民法で決められた人が決められた分だけ相続する。

現物分割

相続財産を一つひとつそのまま各相続人に振り割る方法です。
例えば、現金、土地、建物が相続財産にあり、相続人が配偶者、長男、長女だった場合、現金は配偶者へ、土地は長男へ、建物は長女へ分けます。あるいは、相続財産が預貯金だけで、これを法定相続分に沿って相続人に分割することです。

換価分割

相続財産をお金に換えてしまうので、各相続人に平等に分けることができるメリットがあります。

代償分割

共同相続人などのうちのひとりが、不動産などを相続する代わりに、ほかの共同相続人に対して生じる相続財産の差を代償金として支払う方法です。

遺産相続について事前に検討していなかった場合に起こりえるトラブル

相続が発生すると、被相続人の財産は相続人全員の「共有」財産となります。遺産相続が急に発生した場合にどのようなトラブルが起こりえるか具体的にみてみましょう。

●財産の処分( 利用) がすぐにできない
財産を処分(利用)するには遺産分割協議が完了している必要があります。 「不動産を売却したい」 という場合には、ひとりでも同意しない人がいる場合、被相続人の財産をすぐに処分( 利用) することができません。

●時間の経過と共に相続人が変わる場合がある
例えば、父が亡くなり、長男と次男2 人のみが相続人で、遺産分割協議が成立しないまま数年が経ち、長男が妻と子を残して亡くなった場合、父の財産を相続する権利が、次男、長男の妻、長男の子の3 人に変わります。その場合、相続人が変わり、話し合いが困難になる可能性があります。

●マイナス財産を相続する可能性がある
被相続人に借金があった場合など、マイナスの財産があった場合にはその財産も含めて相続することになります。マイナスの財産の存在が分かっている場合には、すべての財産を相続放棄するという選択が可能になりますが、被相続人に借金があったことが相続後に発覚した場合、原則、負債の財産を含めすべての財産の相続をしたものとみなされます。(例外的に認められるケースを除く)相続放棄・限定承認は相続の開始があったことを知った日から3カ月以内に申告をすることが必要です。

税務上のデメリット

遺産分割が終わらない時に、様々なデメリットが生じます。税法上のデメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。

●配偶者控除・小規模宅地等の特例が適用できない
相続税の申告・納税は相続が発生してから10 カ月以内です。遺産分割が終わらない場合でも、法定相続分で相続したとして申告・納税を行う必要があります。その場合、配偶者控除(※1) や小規模宅地等の特例(※2)は適用できずに申告することになります。遺産分割がどうしても終わらない場合には10 カ月以内の申告・納税の際に「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出したうえで、3年以内に遺産分割を終えるように心がけましょう。その後、配偶者控除・小規模宅地等の特例を適用した申告書を提出し、更正の請求を行えば、払いすぎた税金が戻ってきます。

1 配偶者控除:被相続人の配偶者が遺産分割や遺贈により実際に取得した正味の遺産額が、次の金額のどちらか多い金額までは配偶者 に相続税はかからないという制度です。①1 億6千万円 ②配偶者の法定相続分相当額

2 小規模宅地等の特例:被相続人が住んでいた土地や事業をしていた土地について、一定の要件を満たす場合には80%または50%まで評価額を減額できる特例です。たとえば、被相続人の住宅として使っていた土地(特定居住用宅地)を被相続人の同居配偶者が相続する場合、土地面積330 ㎡までは80%土地の評価が減額され、それに伴い相続税も減額されます。 詳しくは、対象の土地がある管轄の税務署に確認してください。

●納税猶予制度が活用できない
農地、非上場株式を相続した場合には、それぞれに一定の要件を満たせば相続税の納税猶予制度(税負担の軽減)が活用できますが、遺産分割が完了していない場合にはこの制度を活用することができません。相続発生後も後継者が引き続き農業・事業を継続したくても、遺産分割が終わっていなければ納税猶予のメリットを活用できずに税負担が発生し、事業承継に影響が出てしまうことも考えられます。

●物納ができない
相続税をはじめ国税は、納期限までに金銭で一括納付することが原則です。しかし、それが困難な場合には、申告書の提出・担保提供をすることによる「延納(年賊で相続税を納めていく)」のほか、相続財産を金銭の代わりとして納める「物納」ができます。ただし、物納については遺産分割が終わらない場合には、相続財産の所有権が決まっていない状態となっているため、物納できる財産の要件に該当せず、認められません。相続財産の評価額が大きく相続税額も多くなる場合、相続財産の一部を売却して納税資産を確保するケースもあります。しかし、遺産分割が終了していない場合には売却はもちろん物納もできません。そのため、納税資金が確保できない場合には相続人自身の財産を売却するなどして納税資金を確保する必要があります。

スムーズな遺産分割をおこなうために

遺産分割がまとまらずに時間が経過していくと、金銭的な負担はもちろん、精神的な負担や時間的な手間などがかかっていくことになります。相続発生後はできるだけ速やかに遺産分割の話し合いの場を持つことが大切となります。また、財産をのこす側は、自身の遺志(意思)を死後に伝えるために、遺言書などで家族への想いや財産の分割方法を伝えることが大切です。さらに、生前に財産の分け方について話し合いの場を設けるなど、できるだけスムーズな遺産分割が行えるような行動をとっていくことが、財産をのこす側の責務・責任だといえるでしょう。

さいごに

今回は「相続トラブルにならないポイント」についてご紹介しました。
家族・親族のためのも、次世代へとスムーズに財産を引き継いぎできるように準備しておくと安心です。また、税務や手続き方法が分からない場合は早めに専門家に相談されることをオススメします。

監修

中川義敬

中川義敬

日本クレアス税理士法人 執行役員 税理士

東証一部上場企業から中小企業・個人に至るまで、税務相談、税務申告対応、組織再編コンサルティング、相続・事業承継コンサルティング、経理アウトソーシング決算早期化等、幅広い業務経験を有する。個々の状況に合わせた対応により「円滑な事業承継」、「争続にならない相続」のアドバイスをモットーとしており多くのクライアントから高い評価と信頼を得ている。

日本クレアス税理士法人(https://j-creas.com)

橋本珠美

橋本珠美

2001年4月、株式会社ユメコムを起ち上げ、介護・福祉の法人マーケットを中心に、誰もが高齢社会を安心して過ごすためのコンサルティングを始める。
また「高齢者と高齢者を抱える現役世代」のための相談窓口「シニアサポートデスク」「ワーク&ケアヘルプライン」を運営し、高齢者やそのご家族の幅広いお悩み(介護・相続・すまいなど)にお応えしている。
相談窓口の事例と自身の経験(ダブルケア)を取り入れたセミナー活動は好評を得ている。

株式会社ユメコム(https://www.yumecom.com)

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