まごころ介護のお役立ちコラム
MAGOCORO COLUMN
親が認知症になったら「家族の誰かが仕事を辞めないといけない」「認知症の親は、自宅では絶対に面倒みれない」と思っていませんか。
介護は身体的にも精神的にも負担が大きく、仕事と両立するのは容易ではありません。
介護離職ゼロに向けた基盤整備の対象サービスとして、今回は、仕事の働き方を変えずに、今まで通りの生活や残業や出張もしながら、認知症の親の介護をする方法のひとつとして「小規模多機能型居宅介護」をご紹介します。
目次
認知症の母親と、自宅で2人暮らしをしている男性は、仕事は今まで通り、多忙な月末業務時の残業、月2回ある出張もこなしています。
なぜ、仕事も介護も両立できるのか?
それは、
地域密着型の「小規模多機能型居宅介護」
を利用しているからです。
小規模多機能型居宅介護とは
利用者の状況や希望に応じて、「自宅で住み続けるため」の必要な支援をしてくれるサービスです。
利用者の選択に応じて、通い(通所介護)を中心に利用しながら、必要に応じて泊まり(宿泊介護)や、自宅での訪問(訪問介護)の3つのサービスを組み合わせて受けることができる、一種のセットメニューのようなサービスです。
高齢者が、家庭的な環境や、住み慣れた地域でより長く暮らし続けることができるように、日常生活上の支援や機能訓練をおこなうことで、利用者が可能な限り自立した日常生活を送ることができるようにサポートしてくれます。
その方の生活に合わせて3つのサービスを組み合わせて利用でき、緊急時にも比較的柔軟に対応してもらえるのも心強いポイントです。
小規模多機能型居宅介護のサービスは、「小規模多機能」や「小規模多機能ホーム」と呼ばれているところで利用できます。
まずは、担当のケアマネジャーに小規模多機能型居宅介護を利用したい旨を相談しましょう。担当のケアマネジャーがいない場合や、相談しにくい場合は、地域包括支援センターの窓口も対応可能です。
その上で、地域の小規模多機能型居宅介護の中から、適した事業所を紹介してもらいます。事業所によって特色が違うため、実際に足を運んで確認することをおすすめします。
その後、条件に合う事業所が見つかれば面談・契約を行いサービス開始となります。
※小規模多機能型居宅介護サービス開始後は、その事業所専属のケアマネジャーに変更する必要があるのでご注意ください。
要支援・要介護認定を受けている方で、介護度が上がっても住み慣れた地域で生活できるようにするため、原則として事業者と同一の市町村に住んでいる方が対象となります。
※要支援の方は、「介護予防小規模多機能型居宅介護」のサービスが利用できます。
介護保険の自己負担のほかに、宿泊費・食費・日用品費が必要になります。地域や事業所によって、自己負担額が異なる場合があります。
※小規模多機能型居宅介護の詳細や負担金額などについては厚生労働省のサイトにも情報が掲載されていますので、参考にしてください。
利用者や家族の状況に合わせて選択できる
毎回、ケアプランを作り直さなくても、夜間の介護を受けたい場合や、短時間だけ利用したい場合など、通い(通所介護)、泊まり(宿泊介護)、訪問(訪問介護)の3つを臨機応変に選べます。
同じスタッフが対応してくれる
3つのサービスをひとつの事業者で行うので、通いや泊まり、訪問でよく知っている顔なじみのスタッフがサービス提供してくれるため、連続性のあるケア、安心感が得られるでしょう。
利用回数や時間の制限がなく、柔軟に調整できる
急な予定変更や、残業が多くなりそうな時にも、連絡ひとつで、通いサービスを長時間に変更できたり、回数を増やしたりもできます。出張の予定が決まっているのなら、宿泊サービスを追加できます。
必要なサービスを定額で利用できる
回数や時間に応じて増額しないため、必要なサービスを定額で利用でき、安心して介護サービスを受けられます。
注意:それぞれの事業所の人員体制によって受入可能日や申込期日等が決まっている場合があります。
1日に利用できる人数に制限がある
1日あたり通いは18人、泊まりは9人までという定員があるため、混雑時は希望どおりに利用できない場合もあります。
事業所専属のケアマネジャーに変更が必要
すでに訪問介護やデイサービスを利用していて、ケアマネジャーやスタッフと信頼関係が築けている方にとっては、ケアマネジャーが変わるなど新たな環境やスタッフに慣れるところから始めなければならないため、うまく切り替えが進まない可能性もあります。
また、仕事と介護の両立支援に協力的なケアマネジャーを見つけられるかもポイントとしてあげられます。
それまで利用できた介護サービスと併用できなくなる
小規模多機能型居宅介護にサービスを集約する必要があるため、ホームヘルプ、デイサービス、ショートステイといったサービスをすでに利用している場合は解約しなければなりません。
利用回数によっては割高な場合も
定額制で安心ですが、要介護度が低く、それほど多くのサービスを必要としていない人や、基本的に家族がある程度介護できる場合などは、かえって高くつくこともあるでしょう。
訪問介護を個別に依頼するのとどちらが良いか検討が必要です。
仕事と介護の両立には、育児・介護休業法に基づいた「仕事と介護の両立支援制度」や、「介護保険制度等による支援やサービス」を上手く組み合わせて、自分の時間を確保して息抜きすることも必要です。
デメリットの前述であった、併用できるサービスに限りはありますが、小規模多機能型居宅介護を利用していても、訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導、福祉用具貸与などのサービスは併用が可能です。
仕事と介護を円滑に両立するための働き方改革が推進し、フレックスタイム制度や介護休業、介護休暇制度等を利用しやすく、働きやすい環境整備に向けての取り組みも行われています。
法律で定められている各種制度のほか、各企業が独自で支援制度を設けている場合がありますので、人事労務担当者等に確認をしてみるのも良いでしょう。
小規模多機能型居宅介護と、他の在宅介護サービスは、混同されがちですが、実は似て非なるものです。
在宅介護にはデイサービス、ショートステイといったさまざまなサービスがありますが、利用しているサービスの数だけ契約手続きやスタッフとの信頼関係の構築が必要です。
小規模多機能型居宅介護は、「通い」「訪問」「宿泊」をひとつの事業所で馴染みの関係が築かれているスタッフの下、利用者の方の生活に合わせ組み合わせて利用ができます。
一般的に、デイサービスでは、施設が決めた日時に既定のプログラムに沿って、レクリエーションに参加したり、食事をしたり、入浴したりしてサービスを受けます。
小規模多機能型居宅介護の通いサービスの特徴
・必要なときや時間だけ行ける
・必要なサービスだけを受けられる(食事のみ、入浴のみなど)
・自分の生活に合わせた時間の過ごし方ができる
※ただし1日あたりの定員は概ね18人以下
ショートステイは、利用者が事前に利用したい日時を施設に予約することが必須になります。もし希望の予約が取れなければ、日程を変更するか、他の施設を探さなければなりません。
予約が取りにくかったり、急な予定変更等には対応しづらい面があります。
小規模多機能型居宅介護の宿泊サービスの特徴
・日中「通い」を利用した施設に、そのまま「宿泊」したり、必要なタイミングで比較的柔軟な対応が可能
・通い慣れた場所に泊まれる
・本人の体調や家族の急用や急病などの緊急時にも対応しやすい
※ただし1日あたりの定員は概ね9人以下
ホームヘルプは、ヘルパーが時間単位で利用者の自宅を訪れ、規定のサービス枠に合わせて支援を行います。
小規模多機能型居宅介護の訪問サービスの特徴
・その人の状態に合わせて、必要な時に必要な量の支援を受けられる
・散歩の付き添い、安否確認や服薬など、必要に応じて短時間だけのサービスも可能
仕事をしながら認知症の親の介護をされている方を支援する制度は他にもありますが、その中でも、今回は、地域密着型の「小規模多機能型居宅介護」ついてご紹介しました。
親が認知症になった場合の選択肢は、ひとつではないのです。介護離職を考える前に、事例で紹介した方の利用例や内容、在宅介護との比較も参考にして、デメリットの部分もきちんと把握をして検討してみてはいかがでしょうか。
介護は、背負い込むのではなく、生活スタイルを変えることなく、仕事も自分の時間も大切にしながら、前向きに介護することが望まれます。小規模多機能型居宅介護や、様々な制度やサービスを活用して、無理をせず、介護と両立しながら働くための体制を作っていくことが大切です。
公開日:2022年8月12日 更新日:2025年4月7日
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