まごころ介護のお役立ちコラム

MAGOCORO COLUMN

~元気なうちから「認知症」の備え~ 成年後見制度を支える2つの制度(任意後見編)

法定後見制度
「成年後見制度」という制度をご存じでしょうか?
判断力が低下した高齢者などの生活を支えるための制度として2000年4月に発足しました。すでに発足から20年以上経過しましたが、まだまだ認知度は低いです。
しかし、2025年認知症患者は65歳以上の5人に1人を占める見込みです。親が突然認知症になり判断力を失うこともあるかもしれません。制度を事前に知っていることで、家族や親族・地域の身近な人の暮らしを守ることができるかもしれません。
「成年後見制度」はすべての人が知っているべき制度なのです。

今回ご紹介するのは「任意後見制度」です。
「法定後見制度」について知りたい方はこちらから↓
~5人に1人は「認知症」の時代へ~ 成年後見制度を支える2つの制度(法定後見編)

「法定後見」 「任意後見」

成年後見制度は「法定後見制度」と「任意後見制度」の2つの制度から成り立っています。

法定後見制度

すでに認知症などで、判断力が低下した人のための制度

  • 四親等内の親族などが、家庭裁判所に申請手続をします

  • ご本人の症状により、「後見・保佐・補助」のいずれかが適用されます

  • 後見人は、家庭裁判所が選びます

  • 後見人の権限や責任の範囲は、家庭裁判所が決めます

  • 後見人は、行った仕事を家庭裁判所に直接報告します

任意後見制度

今、元気な人のための制度です。

  • ご本人自身の自由な判断で、後見人候補者を選びます

  • 後見人に任せる仕事の内容や条件は、契約書に明記します

  • 公証人立会いの下で、公正証書契約書を交わします

  • ご本人の判断力が低下したら、家庭裁判所で任意後見監督人選任の手続を取ります

  • 任意後見監督人が任命され、後見人は行った仕事を監督人に報告します

「任意後見」とはどんな制度?

認知症などによって判断能力が低下した場合、後見人を選任して財産管理などをしてもらう必要があります。
この場合、家庭裁判所に申し立てて成年後見人を選任してもらう「法定後見」がありますが、それ以外にも「任意後見」という方法もあります。
「任意後見」は、本人が自分の意思で「今は元気、でも将来が心配。もしも私の判断能力が低下したら支援してくれる人がいてほしい」そんな時に備えて、元気なうちに支援内容を決め、支援者との間で任意に契約を行う制度です。

「任意後見」には3つのパターンがあります

任意後見人はどんな人に頼めるの?


基本的に、支援ができる人であれば誰でも可能です。しかし、支援者を選ぶことは非常に重要なことです。十分に検討し、安心して任せられる人に支援をお願いしましょう。
また、身近にお願いできる人がいない場合は、司法書士、弁護士や法人(NPO、株式会社)にお願いすることもできます。

  • このような方が任意後見人になれます
  • 実の息子・娘

  • 義理の息子・娘

  • 親しい知人

  • 司法書士・弁護士

  • 法人

  • 任意後見人になれない人
  • 未成年者

  • 破産者

  • 被補助人

  • 成年被後見人

  • 被保佐人

  • 現住所がわからない者

  • 家庭裁判所によって後見人として欠格と判断されたことがある人

  • 被支援者への訴訟経験がある者とその配偶者・直系血族

任意後見契約のメリット

  • 自分で後見人を選べる

  • 自分で後見内容を設定できる

  • 後見監督人が後見人の仕事をチェックしてくれる

任意後見契約の注意点

  • 後見人には「取消権」がない

    判断能力が低下したとき、不適切な商品を買ってしまうことがあります。法定の成年後見人であれば「取消権」があり利益を守ることが出来ます。しかし、任意後見人には「取消権」がありません。そのため不利益を避けることができないのです。

  • 死後の事務処理・財産管理ができない

    任意後見契約は、被後見人の死亡により終了します。そのため、死後の葬式や相続の手続きなども気になる場合、別途委任契約を締結する必要があります。

  • 開始のタイミングが難しい

    任意後見契約はまだ判断能力が残っている段階で契約を締結するため、同居の親族以外の第三者を後見人に選出する場合、本人の健康状態や日常生活などの情報が乏しく後見開始の申立をいつすべきか悩む例が少なくありません。

任意後見人って何をするの?

任意後見人の仕事内容は、被支援者の「財産管理」と「介護や生活に関するサポート」です。

任意後見人の権限について

任意後見人の持つ権限は、後見事務内容として任意後見契約に被支援者の希望を元にして定められています。そして権限が許されているのは以下の事柄に関する事務手続きに限定されています。

  • 自己の生活

  • 療養看護

  • 財産管理

「任意後見」編:
もしもに備えて、元気なうちに後見人をつけようと思う方が相談するケース

「自営業でひとり暮らしです。持病もあります。姉とは絶縁状態で、万一のときに世話になりたくありません。また、財産も別の人に相続させたいのですが。」

Mさん/75歳・男性

  • 相談内容

    ずっと独身で持病があり、将来のことが心配です。親族は遠方に住む姉のみ。しかし、ずっと疎遠で仲も悪く、自分に万一のことがあった場合、周りには面倒をかけたくありません。自分の財産は苦楽を共にしてきた共同経営者に遺したいと思っています。良い方法はありますか。

  • 回答

    「任意後見」なら、万一ご本人の判断力が失われた時に、後見人が生活を支援し、財産を守ってくれることなどを詳しくご説明しました。(※1)Mさんも納得され、法人と任意後見契約を結ぶことが決定し、手続きを進めることになりました。

  • 公証役場で書類を作成

    ご本人と後見人(任意後見受任者)が、公証役場で「任意後見契約公正証書」を作成。契約の情報が法務局へ登記されます。

  • 契約成立

    任意後見の契約が成立。Mさんと後見人は希望する生活のプランを話し合い、事前の取り決めを行います。(※2)また、今回のケースでは、遺言書も書きました。

  • (将来、Mさんの判断力が低下したとき)任意後見スタート

    家庭裁判所に「任意後見監督人選任」の手続きをします。後見人は、任意後見監督人にご本人の生活状態や財産管理を定期的に報告します。

補足ポイント

※1 「任意後見」の2ステップ

「任意後見」には、法定後見のような区分はありません。第1ステップとして、ご本人と後見人を引き受ける人(任意後見受任者)との間で「任意後見契約」を結びます。しばらく時間が経過して、ご本人の判断力が低下してきたら、第2のステップとして家庭裁判所で「任意後見監督人」を選んでもらう手続きを取ります。

※2 「委任契約」の追加も可能

「任意後見契約」が有効となるのは、将来ご本人の判断力が低下したときであり、それが何年先のことかは誰にもわかりません。しかし、「判断力はあるが、体が不自由なので今すぐに支援が欲しい」というケースもあるでしょう。そういう方は「委任契約」を結んで、すぐに支援を受けることが出来ます。(これを「拡張型 任意後見契約」といいます)
「委任契約」を付けると、定期訪問による見守りや物品購入・契約の手続き、老人ホームへの入所手続きなどの生活支援を契約直後から受けることができます。さらには、死後の事務を任せることも可能になります。

「任意後見」によって、何を守り、どう安心することが出来るのでしょう?

「任意後見」と聞いて、どう利用すればいいのか、ピンとこない方も多いかもしれません。
そこで、どんな人が「任意後見」を使って、老後の身を守っているのか、その他の相談事例もご紹介します。

成年後見制度に関する相談等は各自治体の「成年後見支援センター」や「地域包括支援センター」等にお問い合わせください。

おわりに

今回は、任意後見制度についてご説明しました。
前回ご紹介した法定後見制度とは違い、ご自身に判断能力があるうちに契約を結ぶので、
自分の気持ちが反映されやすいところが魅力ですね。
しかし、死後に契約が解除されてしまうのでその後も任せたい場合は別の契約が必要です。
ご自身やご家族ともご相談の上、任意後見と法定後見どちらがより適切か一度考えてみてはいかがでしょうか?

監修

川原田司法書士

川原田司法書士

1976年生、京大法卒。東京・大阪を中心に、シニア向けに成年後見や家族信託、遺言などの法務を軸とした財産管理業務専門チームを結成。現在、延べ1000名の方々との財産管理顧問として業務を展開。
日本経済新聞電子版にて「司法書士が見た相続トラブル百科」を長期連載他、TV(情報ライブ「ミヤネ屋」、グッドモーニングなど)出演。金融機関を中心に相続セミナー講師を多数歴任し、著書に『司法書士は見た実録相続トラブル』(日経出版)がある。

司法書士法人おおさか法務事務所(http://olao.jp)

橋本珠美

橋本珠美

2001年4月、株式会社ユメコムを起ち上げ、介護・福祉の法人マーケットを中心に、誰もが高齢社会を安心して過ごすためのコンサルティングを始める。
また「高齢者と高齢者を抱える現役世代」のための相談窓口「シニアサポートデスク」「ワーク&ケアヘルプライン」を運営し、高齢者やそのご家族の幅広いお悩み(介護・相続・すまいなど)にお応えしている。
相談窓口の事例と自身の経験(ダブルケア)を取り入れたセミナー活動は好評を得ている。

株式会社ユメコム(https://www.yumecom.com)

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