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【特別養護老人ホーム】費用、入居条件、メリット・デメリットから入居を早めるコツまで徹底解説
目次
ご家族の介護が必要になり、介護施設を探し始めたけれど、「特別養護老人ホーム(特養)ってどんな施設なのだろう」「他の施設と比べて何が違うのか知りたい」といった疑問や不安を抱えていませんでしょうか。
公的な特別養護老人ホームは、費用が抑えられる一方で、入居条件が厳しく、地域によっては長い待機期間が必要になるという特徴があります。
この記事では、特別養護老人ホームの基本的な定義から、入居の条件、具体的な費用相場、提供される多様な介護サービス、そして入居を早めるための具体的な対策まで、入居検討者が知っておくべき情報をご紹介します。
特に、特別養護老人ホームへの入居を検討している方や、在宅での介護が難しくなり施設入居を考えている方に、分かりやすくお届けします。

特別養護老人ホーム(特養)は、在宅での生活が困難になった要介護状態の高齢者に対して、日常生活上の支援や介護サービスを24時間体制で提供する公的な介護保険施設です。
この施設は、地方自治体や社会福祉法人といった公的な運営団体によって運営されており、民間の有料老人ホームに比べて費用が低料金である点が大きな特徴です。
特別養護老人ホームの正式名称は「介護老人福祉施設」であり、終の棲家として長期にわたる入居が前提とされています。
全国に多数の特別養護老人ホームがあり、その施設数は介護保険施設の中で最も多いです。
特別養護老人ホームに入居できる方には、原則として要介護度に関する厳しい条件が定められています。
特別養護老人ホームの基本的な入居条件は、65歳以上で要介護3以上の認定を受けている方です。
この条件は、全国的な入居待機者問題を解消し、特に介護の必要性の高い重度の方を優先するために、2015年に要介護3以上に引き上げられました。
また、特定疾病が認められた40歳から64歳の第2号被保険者についても、要介護3以上であれば特別養護老人ホームへの入居が可能です。
ただし、要介護1または要介護2の方でも、特定のやむを得ない事情がある場合は「特例入所」として入居が認められるケースもあります。特例入所が適用される具体的な条件には、以下のような、在宅介護が極めて困難であると判断される事情が含まれます。
認知症による徘徊、暴言、暴力などの周辺症状が頻繁に見られ、日常生活に著しい支障をきたしている場合。
知的障害や精神障害を伴い、意思疎通の困難さが頻繁に見られるなど、日常生活に著しい支障をきたしている場合。
同居する家族から身体的・心理的な虐待を受けている疑いがあり、入居者の心身の安全確保が困難である場合。
単身世帯や、同居家族が高齢または病弱で介護力がなく、地域の在宅介護サービスも不足している場合。
入居の可否は、申し込み順ではなく、要介護度や家族の状況などから緊急度が点数化され、施設ごとに開かれる入居判定委員会で審査されます。
特別養護老人ホームは、施設の規模や入居対象者の範囲によって、以下の三種類に分類されます。
広域型特別養護老人ホーム
一般的に「特養」として認知されているのはこの広域型で、定員が30名以上の大規模な施設です。
居住している地域に関わらず、どこに住んでいても入居申し込みが可能です。
都市部では入居を待っている方が多くいますが、地域にこだわらなければ、空きのある地方の特別養護老人ホームへ申し込むことも検討できます。
地域密着型特別養護老人ホーム
定員が29名以下の小規模な特別養護老人ホームであり、地域に根ざした住まいとして運営されています。
入居申し込みができるのは、原則として、施設が所在する市区町村に住民票がある人に限定されます。
小規模であるため、より家庭的な雰囲気のなかで細やかな介護サービスを受けられることが特徴です。
地域サポート型特別養護老人ホーム
在宅で介護を受けている方を対象とし、在宅生活を支えるためのサービスを提供する特別養護老人ホームです。
特に24時間年中無休で見守り体制を整えてサポートすることに特化しており、高齢化に伴い、その需要は増加傾向にあります。
特別養護老人ホームは、公的な介護保険施設として、民間の施設に比べて費用負担が抑えられている点が大きなメリットです。
しかし、費用は入居者の状況や施設の居室タイプによって変動するため、具体的な内訳を知っておくことが重要です。
特別養護老人ホームへの入居に際して、民間の有料老人ホームなどで要求される入居一時金は一切不要です。
特別養護老人ホームの月額費用の相場は、要介護3の方の場合で約8万円台から13万円台が目安とされていますが、これは要介護度、居室タイプ、加算、軽減制度の適用などによって異なります。
月額費用の内訳は、主に以下の4つの項目で構成されています。
介護サービス費: 提供される介護や看護サービスにかかる費用で、介護保険が適用されるため、自己負担額は所得に応じて1割から3割となります。
居住費: 居室の賃料に相当する費用で、国が定めた「基準費用額」に基づいて設定されます。居室のタイプ(多床室、ユニット型個室など)によって金額が大きく異なります。
食費: 1日3食分の費用が含まれます。
日常生活費: 理美容費、被服費、レクリエーションの材料費、嗜好品費などが含まれます。なお、クリーニングが不要な洗濯代や、おむつ代(尿取りパッドなどを含む)は基本的に施設側の負担です。
特別養護老人ホームの費用における大きな特徴は、所得に応じた費用軽減制度(特定入所者介護サービス費)があることです。
所得や預貯金を含む資産が一定水準以下の方は、市区町村に申請し「負担限度額認定」を受けることで、居住費と食費の自己負担額に上限が設けられます。
例えば、第1段階(年金受給者、生活保護者など)の場合、多床室の居住費は0円、食費は月額9,000円が自己負担額となります。
この制度により、収入が少ない方でも特別養護老人ホームに入居しやすくなっています。
特別養護老人ホームの居室タイプは、費用負担に直接影響します。
| 居室タイプ | 特徴 | 費用(第4段階の居住費目安) |
|---|---|---|
| 多床室 | 2~4人での共有。 プライバシー確保は難しい。 |
最も安価 (約2万7,450円/月) |
| 従来型個室 | 完全な1人部屋。 プライバシー確保が可能。 |
ユニット型より安価 (約3万6,930円/月) |
| ユニット型個室 | 10人以下の生活単位(ユニット)内の完全個室。 個別ケアが充実。 |
最も高額 (約6万1,980円/月) |
| ユニット型準個室 | ユニット内の準個室(パーテーションなどで仕切り)。 中間的な費用。 |
ユニット型個室に準じる (約5万1,840円/月) |
ユニット型の費用が高いのは、少人数制(ユニット)に基づき、一人ひとりに合わせた手厚い個別ケアが提供されるためです。
特別養護老人ホームの入居を検討する上で、そのメリットとデメリットを具体的に把握しておくことは、最適な施設選びに不可欠です。
| メリット | 詳細 |
|---|---|
| 費用負担が非常に少ない | 公的施設のため、高額な入居一時金が不要で、月額費用も民間施設より安価です。 所得に応じた費用軽減制度(負担限度額認定)や、介護サービス費の一部が医療費控除の対象となる税制優遇があり、経済的な負担を大幅に減らせます。 |
| 終身利用が可能 | 長期入居が前提で、原則として終身にわたり介護を受けられます。 民間施設と異なり、要介護度が上がっても退所を求められる心配がなく、転居のリスクを避けられます。 |
| 介護職員による24時間体制の 手厚い介護 |
介護職員が24時間常駐し、入居者3人に対し1人以上の職員が配置される人員基準です。 プロのスタッフが常時見守るため、夜間の介護が必要な方も含め、安心して日常的な身体介護を受けられます。 |
| 高い看取り実施率 | 近年看取りへの対応体制が整備され、8割以上の施設で看取りを実施する意向があります。 職員が連携して終末期ケアを提供するため、慣れ親しんだ施設で最期を迎えたいという本人や家族の願いが叶います。 |
| デメリット | 詳細 |
|---|---|
| 入居対象者が原則要介護3以上 | 重度の介護が必要な方を優先するため、入居条件は原則要介護3以上に限定されます。 要介護1や2の方の入居は困難で、特例入所は在宅介護が極めて困難な限定的なケースのみ認められます。 |
| 入居までに数年単位の 待機期間が必要 |
地域によっては申し込みから入居までに数カ月、あるいは数年を要する長い待機期間が発生します。 現状、要介護3以上の方だけで全国25万人以上が入居を待機しています。 |
| 医療体制が病院ほどは手厚くない | 医師の常駐義務がなく、夜間に看護師が不在の施設も多いです。 このため、たん吸引や胃ろうなどの高度な医療処置には対応が難しく、入居を断られたり、長期入院(3カ月超)で退去を求められたりする可能性があります。 |
特別養護老人ホームでの生活は、入居者が可能な限り自立した日常生活を送れるよう、幅広い介護サービスと生活支援によって支えられています。

特別養護老人ホームは、都道府県ごとに定められた基準に則り、統一された水準のサービスを提供しています。これにより、全国どこでも一定の基準でサービスを受けられる安心感があります。
食事サービス
栄養士が献立を立て、栄養バランスや入居者の嚥下能力、嗜好に合わせた食事が提供されます。嚥下機能に合わせた刻み食やミキサー食などにも対応し、季節の行事食なども工夫され、食事が生活の楽しみの一つとなるよう配慮されています。
入浴・排泄介助
入浴は週2回以上が基本であり、寝たきりの方でも機械浴槽を使用して安全に入浴できます。排泄介助は、入居者の尊厳に配慮しつつ、可能な限りトイレでの自立を促すよう個別に行われます。尿意・便意を把握した上でのトイレ誘導も実施されます。
機能訓練(リハビリ)
機能訓練指導員(理学療法士、作業療法士、看護師など)が配置され、日常生活に必要な機能の維持・改善を図る生活リハビリを中心に行われます。レクリエーションや行事もリハビリの一環として活用されます。
健康管理・医療連携
医師(訪問診療)と看護職員が入居者の健康管理を実施し、服薬管理や緊急時の対応を行います。夜間に看護師が不在の場合は、すぐに連絡が取れるオンコール体制を敷いて緊急時に備えます。
生活支援・レクリエーション
居室や共用スペースの清掃、洗濯サービス(施設負担)が行われます。また、お祭り、誕生日会、外出イベントなど多種多様なレクリエーションが企画され、入居者の生活に楽しみと潤いを提供します。
看取り介護
特別養護老人ホームは終の棲家として、医師や看護職員、介護職員が連携し、本人やご家族とコミュニケーションを取りながら、最期まで慣れ親しんだ施設で過ごせるよう終末期ケアを提供する施設が増えています。
入居待機者が多い特別養護老人ホームに、できるだけ早く入居するためには、以下の具体的な対策を講じることが重要です。
複数の特別養護老人ホームへ同時に申し込みをする
入居難易度の高い特別養護老人ホームの場合、空きが出る確率を高めるために、希望条件に近い施設を複数選んで同時に申し込むことが有効な戦略です。
また、優先順位を決める際には、定員の多い施設や、都心部から離れた待機者の少ない施設から申し込むことも、入居までの期間を短くするコツの一つです。
要介護度の変化や在宅介護の状況を施設に随時報告する
特別養護老人ホームの入居は、要介護度や家族の介護の状況など、緊急性の高い方から優先される仕組みです。
そのため、申し込み後に要介護度が上がった場合や、自宅での介護がさらに困難になった場合は、速やかに申し込んだ施設へ連絡し、最新の状況を伝えることが重要です。
状況の悪化は、入居の必要度(点数)を高め、優先順位が上がる可能性があります。
特養が併設するショートステイやデイサービスを利用する
入居を希望する特別養護老人ホームにショートステイやデイサービスが併設されている場合、積極的にこれらのサービスを利用しましょう。
事前に施設を利用することで、職員に利用者の身体状況や生活習慣を把握してもらいやすくなり、入居の検討が円滑に進む可能性が高まります。
特別養護老人ホームは、「要介護3以上」の方を主な対象とする公的な介護施設です。
以下に、特別養護老人ホームの重要なポイントをまとめます。
費用相場: 入居一時金は不要で、比較的安価な費用
最大の魅力: 終身にわたる安心の介護サービスを提供し、24時間体制の介護や看取りにも対応している点
最大の注意点: 入居条件が厳しく、地域によっては長い待機期間(数カ月〜数年)を要する点
入居を希望する場合は、将来的な身体の状態の変化を考慮し、現時点で入居の意向が明確でなくても、早めに複数の施設へ申し込みを行うことが推奨されます。また、入居をスムーズに進めるためには、要介護度の上昇や家庭の状況の変化を施設にこまめに伝え、緊急性の高さをアピールするなどの戦略的な行動が重要となります。
もし入居が難しい場合や、待機期間が長期にわたる場合は、介護付き有料老人ホームや住宅型有料老人ホームなど、他の介護施設を代替案として検討し、ご本人様の状態や経済状況に最も適した選択をすることが大切です。
特別養護老人ホームを含め、お客様の状況とニーズに最適な介護施設をご提案できるよう、専門の相談員がサポートしております。
施設選びでご不明な点や、具体的なご相談がございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。
特別養護老人ホームについて簡単に解説している動画はこちら⇒
10分でわかる介護施設シリーズ②特別養護老人ホーム
監修
公開日:2025年12月4日