まごころ介護のお役立ちコラム

MAGOCORO COLUMN

知っておきたい相続についての「基礎知識」~相続人以外の親族が長年にわたり介護。これは「特別寄与」に認められる?


皆さんは相続についてどのくらいご存知でしょうか?2019年1月から相続法の改正が段階的に施行されています。ご自身や親の老後に大きく影響する事柄です。遺産を相続するとなったときに慌てないように知っておきたい相続についての基礎知識、今回は「特別寄与料について」ご紹介します。
今までは、単純に法定相続割合で遺産を分けていましたが、被相続人(亡くなった人)の療養看護・介護をしてきた相続人以外の者の貢献が財産的にまったく考慮されないのは不公平だという指摘が従来からなされてきました。そこで、2019年7月1日より施行された「特別の寄与」の制度が設けられました。どのようなケースが特別寄与料として相続人に請求できるのか、詳しく解説します。

特別寄与料とは

相続人ではない被相続人(亡くなった人)の親族で,被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者(これを「特別寄与者」といいます。)は,相続人に対し,寄与に応じた額の金銭(これを「特別寄与料」といいます。)の支払を請求することができます。

具体的には以下のような場合に特別な寄与として認められる可能性があります。

①療養看護などの労務提供をしたこと
②①によって被相続人の財産の維持・増加について寄与をしたこと
③①②は無償であること

有償だったケースでは特別寄与料は認められません。

特別寄与料が認められる親族

特別寄与料が認められるのは、被相続人と一定の範囲にある親族です。親族でない介護士などには権利が認められません。

①6親等内の血族
②3親等内の姻族

血族とは → 自分と血縁関係にある人
姻族とは → 婚姻により関係が生まれた血族

※亡くなった人の親族なら叔父叔母、大叔父大叔母、いとこやはとこなどにまで特別寄与料が認められる可能性があります。結婚相手(妻)の親族であれば義理の兄弟姉妹や義理の叔父叔母などまでが対象となります。

事例でみてみましょう

長男の奥さんは、同居していた義父を2年間にわたり介護や、
義父のお金の管理、療養介護の面倒をみてきました。
義父が死亡し、法定相続人は、長女と長男の2人。
本来であれば、長男の奥さんは遺産分割の相続人ではないため、
相続を受けることはできません。
しかし、今回の法改正により、長男の奥さんは1親等の姻族なので、
範囲に含まれることから、特別寄与料を主張できることになります。

内縁の妻(夫)やパートナーでも認められる?

内縁の妻(夫)や同性のパートナーは、法律的に婚姻関係があるわけではないため、相続人にはなれず、また、「特別寄与料」請求の要件となる一定範囲の親族(相続人の6親等内の血族、3親等内の姻族)にも該当しません。そのため、被相続人の内縁の妻(夫)や同性のパートナーが寄与していたとしても、寄与分は主張できず、「特別寄与料」の請求もできません。なお、被相続人と内縁の妻の間に子(非嫡出子)がいる場合、被相続人が認知をしていれば法律上の親子関係が成立しているため、その子は相続人になることができ、寄与次第では寄与分を主張することができます。

相続人がいない場合は?

内縁の妻(夫)や同性のパートナーは相続人でも親族でもないため、遺産を相続することも、特別寄与料を請求することもできません。しかし、被相続人にそもそも相続人がいない場合、特別縁故者と認められれば、特別寄与料としてではありませんが、遺産の全部または一部を受け取ることができます。

遺言書がある場合は?

遺言書と特別寄与料とでは、原則として遺言書が優先します。
遺言書ですべての財産について遺贈を受ける人が決まっているのであれば、もはや特別寄与料を請求する余地はありません。

特別寄与料を主張する方法

①当事者間の協議
寄与者は、相続人に特別寄与料を請求し、相続人と協議により特別寄与料を決定します。

②特別の寄与に関する処分調停
家庭裁判所において、調停委員(+裁判官)の仲介により、特別寄与料の合意を目指します。

③特別の寄与に関する処分審判
遺産分割調停が不成立となった場合に、家庭裁判所の判断によって、特別寄与の有無が決定されます。

特別寄与料と税金

特別寄与料を受け取った場合、寄与者には「遺贈」されたのと同じ扱いになるので相続税がかかります。

特別寄与料の請求期限

特別寄与料の請求期限は、相続開始および相続人を知ったときから6カ月以内、または被相続人が亡くなってから1年以内のいずれか早い日です。

さいごに

今回は相続の基礎知識として「特別寄与料」についてご紹介しました。
遺産相続の内容や相続の仕方についてはご家庭ごとに事情が違います。相続財産・不動産・事業の承継、そして生前贈与について、トラブル対策として被相続人の方が生前のうちから、ご親族でよく協議しておきましょう。相続は大きな金額が動く場合が多いです。相続・寄与分等について迅速・円滑・円満な手続きを目指して早めに弁護士・税理士などの専門家に相談することをオススメします。

監修

川原田慶太司法書士

川原田慶太 司法書士

1976年生、京大法卒。東京・大阪を中心に、シニア向けに成年後見や家族信託、遺言などの法務を軸とした財産管理業務専門チームを結成。現在、延べ1000名の方々との財産管理顧問として業務を展開。
日本経済新聞電子版にて「司法書士が見た相続トラブル百科」を長期連載他、TV(情報ライブ「ミヤネ屋」、グッドモーニングなど)出演。金融機関を中心に相続セミナー講師を多数歴任し、著書に『司法書士は見た実録相続トラブル』(日経出版)がある。

司法書士法人ゆずりは後見センター(https://yuzuriha-kouken.jp/)

橋本珠美

橋本珠美

2001年4月、株式会社ユメコムを起ち上げ、介護・福祉の法人マーケットを中心に、誰もが高齢社会を安心して過ごすためのコンサルティングを始める。
また「高齢者と高齢者を抱える現役世代」のための相談窓口「シニアサポートデスク」「ワーク&ケアヘルプライン」を運営し、高齢者やそのご家族の幅広いお悩み(介護・相続・すまいなど)にお応えしている。
相談窓口の事例と自身の経験(ダブルケア)を取り入れたセミナー活動は好評を得ている。

株式会社ユメコム(https://www.yumecom.com)

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